デリバティブ偏愛家の日記

日本の個人投資家がどうやってオプションを取引しているのか謎で仕方が無い

題名の通りである。

日本の証券会社数社に先物オプション口座を開いているが、どの会社でも、ちょっとでも高度なオプション取引をしようとすると、データが無かったり、シミュレーション不能だったりする。それこそ昔はBloomberg端末があったので、それでちまちま計算してリスク量を見ながら戦略を立てていたが、今は一からExcelでマクロを組んで自作する必要がある(結局Bloombergがあった頃もExcelの自作シミュレーターは使っていたが)。Excel自体は大した話では無いが、証券会社側も流石にもう少し頑張って欲しいと思うのは私だけだろうか?

※2018/7/12 末尾にカブドットコム証券の「AIデリバティブ」について追記

デルタすら出ない

オプション取引に馴染みの無い方には通じにくいが、デルタはオプションのリスクとして最も基本的な指標である。日経平均オプションであれば、日経平均が1円上がったら、そのオプションはいくら価格が変化するか、を表す数値である。取引ツールを見ていてデルタすら出ない、というのは、感覚としては「カーナビなのに北がどっちか表示されていない」レベルである。察しろ、ということであろうか。まあ一応先物の現在価格、残存日数、IV(インプライドボラティリティ)、権利行使価格、金利というデータがあるので手元で計算することは可能だが(とは言え累積確率密度関数の計算が必要なので、紙とペンでは不可能)、このくらい表示しても良いのではないか。

 

カーブが出ない

カーブとは、各権利行使価格毎のIVをプロットしたもので、これまたオプション戦略において必要不可欠なデータである。個人的には市場のセンチメントを測るのにも使っており、日中にバタバタ動くものではないが、毎日チェックするくらいの重要度ではある。

確かにカーブは市場の生データだけ使うとかなり粗い形状となったり、不足して歯抜けとなることが多いので、補間するモデルを選択する必要がある。そのモデル選択によっては顧客から「お前が出したカーブを信じて取引したら損が出た」等と苦情を受けるリスクも多少はあるかもしれないが、そこは免責事項として記載しておけば良いのでは、とも思う。

国内だとカブドットコム証券では表示は可能である。ただ、表示のみでデータのエクスポートは出来ない。

 

Bloombergはやはり最強だった

Bloombergはカーブどころか、複数限月のカーブをまとめた「ボラティリティキューブ」を表示することができた。なんと過去日付との差分表示機能まである。

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(USDJPYのボラティリティキューブ)

「ボラティリティキューブ」を見て皆さんは何を思うか。

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ちなみに筆者は、

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おふざけはこの程度にして、確かにこれは有益であった。例えば英のEU離脱国民投票の半年前くらいから、既にGBPJPYのIVは「満期まで半年」の点だけ高く、かつPut側のIV側がCall側よりもかなり高い状況にあった。これは、国民投票で相場があれる可能性を市場が織り込み、かつ厄介なのは離脱となるパターンであったので(実際厄介なことなった)、GBP下落に対するヘッジ取引が多かったことを意味している。離脱の確率が上下するに従ってキューブの形状も変化していったが、市場への織り込み具合を判断するには最適だった。

 

唯一の希望、IB証券

惨憺たる状況だが、海外系ではあるが国内に支社を持つ証券会社であるインタラクティブ・ブローカーズ証券(以下、IB証券)だとカーブ表示+データのエクスポートが可能である。

www.interactivebrokers.co.jp

IB証券を推奨したところで、筆者は残念ながらアフィリエイトではないので1円も利益にならないが(おい)、数少ない優秀な業者なので重要な存在である。

IB証券ではキューブは表示できないが、複数満期のカーブを過去日と比較できる。残念ながらOTCのFXオプションが無いのでGBPJPYといった為替関連のカーブが見れないが、そこはCMEの為替先物で代用するしかない。ただ満期が短いのであまり役に立たない。

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(日経オプションのカーブ)

この画面からデータのエクスポートも可能なので有り難い。ちなみに対象を大証に上場するオプションに限定、かつ引け時点のデータで良ければOSEのHPからもダウンロードは可能である。

www.jpx.co.jp

ただ、オプション取引をしている、という人はネット上でも少なからず存在しているが、IB証券を使っています、という話はあまり聞かない。ここで題名に戻るのだが、果たして皆はどうやって取引しているのか…?シミュレーターは自作する前提で世界は回っているのか…?それとも累積確率密度関数を難なく暗算で計算でき、脳内でシミュレートを繰り返す超人たちの戦場なのか…?謎は深まるばかりである。

 

※2018/7/12追記

国内ネット証券では「オプション界の雄」と筆者が勝手に呼んでいるカブドットコム証券が、オプションのリスク管理やPLシミュレーターをバージョンアップしていた。その名も「AIデリバティブ」。

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正直なところ、ユーザーが自身の相場観に合わせて戦略を選ぶし、ストレステストも過去データを反映しているだけなので、どこにも”人工知能”という意味での”AI”要素が無いように見えるのだが、まあこれはイマドキ感が必要だった、ということなのだろうか。それともデリバティブに対する”愛”を表現したかったのだろうか。

以前は損益チャートはあっても2Dで、かつ特定の日付でのみ表示だったので、時系列変化は少しずつ日付を手動で変更して確認する必要があったが、3D化したことで楽になっている。

ただ、相変わらず縦軸として表示できるのはPLのみで、デルタやベガに切り替えることは出来ないし、時系列チャートもオプションを組み合わせた一部の戦略を取ると表示がやや怪しい印象。3Dチャートも別に残存一ヶ月で原資産が10,000円も動かないのに、横幅は固定値となっており、結局そこは2Dの方が見やすいという状態である(2Dだと横幅の長さを変更できる)。

散々批判しているが、これでも国内ネット証券で、今とてもではないが賑わっているとは言えない個人投資家のオプション取引に関して、会社としてコストをかけて盛り上げていこうという気概を感じるだけでも評価したいところである。

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