デリバティブ偏愛家の日記

原油ETFを比較してみる

最近色々とETFの分析をしてみているので、まとめも兼ねて書いておく。

東証上場原油関連ETF概要

出来高は三段階評価。黒い星の数で多い程出来高も多い。

WTI原油価格連動型上場投信(1671)

ETFS WTI原油上場投資信託(1690)

NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス上場(1699)

NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル ETN(2038)

NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ベア ETN(2039)

下二つはETNである。ETNはあくまでETNであってETFではなく、早速タイトルと矛盾しているが、ここでは筆者にとって面倒なので読者にとって煩雑なので 全て以下もETFと表記していく。

ETFSが運用する商品は軒並み出来高が少ないが、地味に信託報酬は最安。とは言え流動性が低く、Bid/Offerコストで一瞬で吹き飛ぶ程度の差異なので、普通に原油ETFをレバ無しで取引したいなら野村の1699で決まりだと思われる。

続いて早速価格変動の分析に入ろう。

 

原油ETFと期近先物価格の比較

筆者は相変わらず現物裁量ロングは苦手なので、ここではCMEに上場するWTI先物との価格差等を調べてみる。ETF側は最も流動性の高い1699。

パフォーマンスの単純比較

まずは日足ベースで中期のパフォーマンスを比較してみた。WTIは各営業日のUSDJPY引け値で円建てに換算している。

f:id:plnjpy:20180305122058p:plain

左軸に1699と先物のパフォーマンス(初期を100%とする)、右軸に両者の乖離(WTI – 1699)。…なかなかの乖離である。2016年初比で、先物価格は+50%超だが、ETFはほぼ元の水準に戻っただけの状態。

 

ロールオーバーコストの計算

「おいおい、このETF詐欺かよ」という話になりそうだが、単純にそうはいかない。ETF側は毎月満期を迎える先物をロールオーバーしているので、その際に期近より期先が高いコンタンゴ状態だとコストが発生することになる(逆に期先が安いバックワーデーションの場合は利益になるが)。先のグラフは単純に期先の先物価格を繋いでいるだけなので、ロールコストが含まれていない点に留意する必要がある。

で、先物の期近、期先間のスプレッドがどう推移しているのかを調べてみた。

f:id:plnjpy:20180305123225p:plain

データは2013年から。左軸に期先-期近のスプレッド(単位:ドル)、右軸は期近の先物価格。2015年以降は恒常的に期先の方が高いコンタンゴ状態となっており、ロールオーバーコストの支払いが発生する状況が続いている。

本来原油は保管コストが嵩むので教科書的にはコンタンゴになりそうだが、ざっくりと原油価格が高水準の場合に下落を見込んでか期先が安く、低水準の時は上昇を見込んでか期先が高くなる模様。この辺りの原理の詳細や、長期のスプレッドは下記のシンプレクスのサイトが分かり易い。

www.simplexasset.com

ただ、直近を見るとスプレッドはほぼ0に近い水準となっているのは注目したい。

 

ロールオーバーコストを加味したパフォーマンスを観るには

実は、既に野村金融工学研究センターからコスト計算済みの指数が公表されている。

NOMURA 原油インデックス – 野村證券金融工学研究センター

この指数は原油先物を月次でロールし続けた場合のパフォーマンスを計算しており、基本的にはETFはこちらに近似することになる。何故か過去データを見ようとするとテキストファイルが開かれるが、「リンク先を保存」で強引にcsvに変換できる。

ここではNOMURA原油ロングインデックスと1699のパフォーマンスを比較してみた。元の指数はドル建てのパフォーマンスを計算するものだが、ETFは円建てで指数追従を目指すようなので、指数も円建てに換算した。

f:id:plnjpy:20180305152645p:plain

左軸が1699と指数のパフォーマンス、右軸がその差分(指数-1699)であるが…これも乖離している。勿論自明な乖離要因もある。

  1. 信託報酬分ETF側が劣後する
  2. 先物のロール時にETF側はBid/Offerスプレッド分コスト+約定手数料がかかる
  3. 指数はNY引けで決まるが、ETFは東京引け値なので時間が異なる

1に関しては年0.5%なので、分析期間である約2年でも1%にしかならない。2に関しては多少雑な推定だが、先物のスプレッドが約0.01ドル(=最小呼び値単位)なので、これが毎月発生すると、平均0.021%×26(月数)=0.54%と、これも軽微ではある。無論、かなりのロットで先物のロールをすることになるので、最良気配でロールできないケースも考えられるため、この推定は最低限のコストしか計算できていないと考えた方が良さそうである。3は最も怪しい要因だが、であれば上下に正規分布的に乖離するはずなので、決定的ではない。

とりあえず指数とETFの乖離がレンジで推移するのであれば、逆張りは妙味がありそう。何よりETF側の板はかなり厚いので、CMEの先物買いと相殺するだけのポジションを組みやすいのは利点である。

余談だが、乖離が1699自体の問題なのか調べるために、米国に上場している原油ETFの中でも最大規模の残高を誇るUSOでも同様に比較してみた。ちなみにUSO自体の紹介はこれが分かり易い。

www.etf.com

パフォーマンスはETFがドル建てなので、NOMURA原油ロングインデックスをそのまま使用している。

f:id:plnjpy:20180305160646p:plain

データが5年分なのに乖離は1%程度に収まっている。信託報酬が年0.76%なのを考えるとETFのパフォーマンスが良すぎるような気がするが…原因は不明である。

 

レバレッジETFと通常のETFの比較

続いて、流動性は若干劣るが一応上場している2038と1699を比較していく。

対象指数に注意

2038は1699と異なり、CMEのWTI原油先物ではなく、TOCOMのドバイ原油の価格から計算した日経・東商取原油指数を、更に日次騰落率を2倍にした日経・東商取原油レバレッジ指数を参照している。

そもそもTOCOMって何?という方もいるかもしれないが、東京商品取引所、略して東商である。東証と音が一緒で分かり難いの本当にやめてほしい。指数はここで公表されている。

https://www.tocom.or.jp/jp/market/tocom_index/sub_index_l.html

ちなみに商品先物業界の自主規制団体は日本商品先物取引協会、略して日商協。株の自主規制団体は日本証券取引業協会、略して日証協。音が一緒で分かり難いの本当にやめてほしい。

何はともあれ、レバ云々以前に参照する原油が異なるのは留意したい。

 

原油ETFの日中変動に関して

f:id:plnjpy:20180305151832p:plain

まず先に注目いただきたいのは、標準的な原油ETFである1699のローソクの推移。ほとんどが窓で、ローソクの実体がかなり小さいのが分かる。

というのも、原油ETF(1699等)の参照するCME原油先物は米国時間での取引量が最大となるので、東京時間に動くものではない。

f:id:plnjpy:20180305152122p:plain

上はデータが古いが、WTI先物の時間帯別の取引量(左軸)と年率ボラティリティ(右軸)である。東京時間は完全に過疎っている。

一応ETFは円建てなので、原油価格が不変でもUSDJPYが大きく動くとETF価格への影響はある。しかしながら原油のボラが年率20~30%程度に対し、USDJPYは年率8~10%程度しかないので、ETF価格に与える影響は相対的に軽微だろう。

基本的にこれら海外資産を参照するETFは寄り付きでほぼその日の終値が決まると考えて良いのではないか。

 

前日比の比較

f:id:plnjpy:20180305151709p:plain

さて、早速レバETF(2038)と1699の前日比(終値と前日終値の騰落率)を見てみた。何故か微妙に2倍にならない…

 

日中変動で寄り付きの乖離は縮小する?

ここで一つの仮説を立てる。まあそもそも引け値ベースで2倍になっていないので何とも言えないが…2038が1699の2倍に綺麗に動くと仮定して、1699の2倍の騰落率を理論値とする。

仮説:寄り付きの時点で2038が理論値と乖離していた場合、引けにかけて理論値に接近する(乖離が縮小される)

何だかありそうな話ではある。寄り付きは成行注文と板のバランスで決まるので、2038が理論値から離れる可能性は大いにある。日中の原油価格変動が小さい以上、それがザラバで解消されるのでは?との見方である。

f:id:plnjpy:20180305154425p:plain

X軸に寄り付き時点の理論値との乖離、Y軸に引け時点での理論値との乖離をプロットしてみた。近似式は約0.9なので、若干引けにかけて乖離が縮小しているが、せいぜい10%程度である…うーむ。

結論:寄り付きの時点で2038が理論値と乖離していても、それ程ザラバで解消されない

とするとザラバの価格変動は何なのか?

…当然こういった議論になる。皆、何を見て取引しているのだろう…?これぞ”需給”ということなのだろうと思う。手元に板のデータが無いので分析が困難だが、一定間隔でスナップショット的に保存していけば面白いかもしれない。

Tagged on: ,

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です