デリバティブ偏愛家の日記

FX業者の株価はどう動いているか分析してみた

どうも、デリバ亡者です。今回は筆者の古巣であるFX業界の株価を分析してみました。ちなみに以前、銀行株の裁量取引に向けた分析もやっているので、興味のある方はこちらもどうぞ。そして結局銀行株ETFショートはやってません(おい)。スルガ銀行もこけたし、ビューは相変わらず間違ってはないと思っていますが…

元銀行員なのだから銀行株に挑戦してみる 第1回

今回はいつにも増して、ろくなオチがありません。業界動向等はある程度調べて得るものがありましたが、過度な期待はしないで下さい。

 

仮説

昔から顧客取引の大半はUSDJPYという異様な偏りを見せていた本業界。なのでとりあえず立てた仮説は、

「USDJPYのボラティリティが上がればFX業者の収益が増え、株価も上昇する」

というもの。

 

前提の確認

FX業者の収益源

おさらいですが。

  • 基本的には、顧客の買い売りの注文が相殺された際のスプレッド分が収益(マリー収益)
  • USDJPYのような狭いスプレッドの通貨ペアの場合、カバー取引は結構な割合で損失となる(インターバンクの方が対顧客スプレッドよりも広いケースがある)

→なのでUSDJPYは基本的に他の通貨ペアと比べて収益率が低い、薄利多売です。

  • 逆にスプレッドのある程度広い通貨ペアの場合、ストレートにカバーしても収益になるケースがあり、各社キャンペーン等で必死に他の通貨ペアに客を動かそうとしている

→ヒロセのポンド祭が良い例。いつサイト見ても「ポンドが熱い!」と煽ってますけど、別に市場のボラが高い訳ではないケースも多いかと。単純にUSDJPY以外に分散させる戦略。

  • 為替のボラティリティが上がると顧客の取引量が増加するが、極端にボラが上昇するとカバー先のスプレッドが広がるのでカバーコストは増加。

→対顧客は原則固定スプレッドを提示するので、コストだけ増に。ただ、ある程度のボラ上昇はメリットしか無かった印象。

  • スワップポイントにも買い売りの間にスプレッドがあり、カバー先でのロールオーバー時のスワップ損益と対顧客スワップ損益の差分が収益(スワップ損益)

→マリー収益に対して大きな収益源とは言いにくいかな。

 

今回の分析対象FX業者

本当はもう少しいますが、ネット証券系で証券メインのところは外しました。

名称 証券コード 上場区分 時価総額(百万円)
GMOフィナンシャルホールディングス 7177 JASDAQ 95,401
ヒロセ通商 7185 JASDAQ 16,482
トレイダーズホールディングス 8704 JASDAQ 7,887
インヴァスト証券 8709 JASDAQ 5,881
マネーパートナーズグループ 8732 東証一部 12,304

各社、株やらETFやらCFDやら仮想通貨やら色々手を出してますが、FX専業なのはこの中でヒロセだけかと思います。昔はマネースクウェアとかいたんですが、非公開化しました。

 

業界動向

定性的な話

  • 金融庁がレバレッジ規制を強化する話(25倍→10倍)が出ていたが、今回は業者側がしっかりストレステストすることで一旦決着

→途中かなり迷走してた有識者会議ですが、何とか25倍を死守した感じですね。

  • 一時期BTCが盛り上がった反動でFXの取引高が減少したが、仮想通貨ブームは一段落した

→価格下落+コインチェックの問題+ボラ低下でかなりのダメージに。一応FX業者も仮想通貨には取り組み始めているので、再度盛り上がった場合も完全に取り残されることはなさそうです。

  • 主力のUSDJPYは、日銀の量的緩和の長期化を受けて以前程の値動きは無い状態だが、米国利上げで再度動き出す可能性はある

→トランプがちょくちょくtwitterでドル高牽制してきますけどね。

 

定量的な話

先に業界全体での取引高に関してですが、アベノミクス開始でそれ以前と比べて大きく増えています。

<店頭FX取引高と全体に占めるUSDJPYの比率>

データは金融先物取引業協会より。金額は百万円単位。”店頭”なのでくりっく365は含まれません。まああんまり出来高無いから。

勿論業界自体の成長もあるとは思いますが、リーマンショック前にUSDJPYをロングした個人投資家が、やっとアベノミクス開始で塩漬けから解放されて、拘束された資金が回転するようになった、という印象ですね。取引高増と共にUSDJPYの比率も大きく伸びています。

<店頭FX取引高に占める各通貨ペアの比率>

2011~2012年にかけてギリシャ問題でEUR関連が、2016年はBrexit関連で少しGBPJPYが増えてますが、圧倒的にUSDJPYが占める割合が高い状態です。

 

株価推移

予測とか分析云々以前に、まずは株価の推移を見ます。

上のグラフは各社の株価を、上場初日の引け値を100としてプロットしたものです。

マネパは一時かなり上昇したようですが、結局最高値と上場時の半分くらいでしょうか。ヒロセは堅調。GMOは微妙なところで低迷しています。トレイダーズとインヴァストに関してはノーコメントということで。

 

業績と株価の関係

そもそもの問題が発覚する

実はご存知かもしれませんが、FX業者の一部は毎月前月の取引高や営業収益を開示しています。大よそ翌月の第7~8営業日までには出ているイメージでしょうか。

下は月次で開示しているGMO、ヒロセ、マネパの3社の営業収益を比較したグラフです。

で、まあ普通はこれが株価と連動すると考えます。ということで、各社の営業収益と株価(月末時点)を散布図にプロットしたのが下図です。

…全然連動していない…だと…?!

仮説はUSDJPYのボラが…とか言っていましたが、そもそも月次の営業収益が株価に反映されていないという大きな問題に直面しました。月次損益は翌月に発表されるので、経済指標同様に遅行するので、株価を一ヶ月遅らせても大した変化にはなりませんでした。

 

それでもUSDJPYのボラと比較する

根底から崩れている気はしますが、まあ一応見ていきます。下図は、各社の株価を開始時点を100としてプロットしたもので、USDJPYは日次の変化率から計算したヒストリカルボラティリティを年率換算しています。

ほとんど関係が無いと言って良さそうです。

 

次に、2016年1月の月次営業収益を各社それぞれで100として、その後の推移をプロットしたものです。

こちらは若干似ているところもある印象ですね。

 

さらに、USDJPYのボラ計算方法として、日次の変化率を使うのではなく、月内の高値-安値で計算したレンジを使ったパターンです。特に直近の高値や安値を更新した場合に取引が増える傾向があるので、それを意識した計算方式です。

営業収益云々よりも、直近のUSDJPYの動きの鈍さが凄いです。

 

相関係数の計算

グラフだけでなく相関係数も計算しました。

GMO ヒロセ マネパ
株価 vs 営業収益 0.06 0.35 -0.09
株価 vs USDJPY Vol -0.27 -0.61 0.28
株価 vs JASDAQ指数 0.19 0.76 -0.56
営業収益 vs USDJPY Vol -0.26 -0.04 0.32
営業収益 vs USDJPY Range 0.00 0.12 0.51

ヒロセはJASDAQ指数に多少近い動き、マネパの営業収益はUSDJPYのレンジに微妙に近い動き、程度ですね…

 

おわりに

今回は残念ながら、FX業者の株価がどう動くのかイマイチ分かりませんでした(おい)

営業収益等の分析期間が短かったのが原因かもしれませんが、全体に改善の余地はありそうです。

 

余談

月次の開示では取引高と預かり証拠金残高も公表されるんですが、この取引高÷証拠金残高で計算した「資金回転率」を比較してみました。

全体に低迷気味ですが、業界最大手のGMOに対して、常にヒロセが勝っています。これは結構面白いデータかもしれません。株価の動きにも表れていますが、「稼ぐ力」としてはヒロセが一番優秀なのかもしれません。

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