デリバティブ偏愛家の日記

SKEW指数が過去最高水準らしいが

9/18付で、面白いBloombergの記事が出ていました。

「ブラック・スワン」ヘッジが急増-米国株強気派に警戒促す信号点滅

要約すると、CBOEが発表するSKEW指数が過去最高水準にあり、米株のテールリスクが高まっている、という話です。前にも高水準で米株オワコンか、みたいな記事が出ていたんですが一向に米株が崩れないので、実際使い物になる指数なのか、VIXとの関連はどうなのか等を簡単に調べてみました。

 

SKEW指数とは

概要

CBOEが発表している指数の一つで、VIX同様にOTMのS&P500オプションから計算されます。巷では「ブラック・スワン指数」等とも呼ばれています。

CBOEのSKEW指数概要サイト

Call、Putオプション間の需要差を指数化(100で乖離0の均衡状態)したもので、為替で言えばリスクリバーサル(RR)に近いものですが、RRとの差異としては、

  • 特定の権利行使価格に依存しない(このSKEW指数単体で全OTM分を内包する)
  • ATM IVの水準に依存しない(RRはATM IVで割らないので、他の通貨ペアと比較する場合にそもそものATM IV水準が乖離していると、やや雑な分析になる)

といった点が挙げられる模様。細かい計算方法はCBOEが公表しているホワイトペーパーをご参照下さい。

 

推移

SKEW指数の長期推移(出所:CBOE)

データは1990年以降から直近分まで、CBOEのサイトにて取得可能です。指数は100でCall、Putが均衡の状態、100以上はPutが割高を意味するので、まあ大体教科書通り100未満にはなりません。冒頭のBloomberg記事にもあったように、確かに過去最高水準まで上昇してきていますが、特に2014年以降は相当日々の値幅が広く、かなり荒い動きとなっています。

実はBloomberg日本語記事あるあるなんですが、元の英語版記事の一部が抜粋されており、今回もやや重要なコメントが割愛されていました。

Surge in Black-Swan Hedging Casts Shadow Over U.S. Stock Rally

記事後半の指摘にあるように、OTMオプションのクオートを使うので、流動性が低いDeep OTMの信頼性の低いデータが組み込まれることで指数全体の信頼性が低下している印象を受けます。今年2月のVIX急騰祭の際にも、VIXの計算根拠となるデータのうち、Deep OTMでは恣意的にクオートが操作されている可能性が指摘されていましたが、これも同じ問題を孕んでいるようです。とは言え、移動平均等で均しても高水準にあることは事実。

 

VIXとの関係

左軸:VIX、右軸:SKEW指数

VIXが確率分布の裾野の広さを表すのに対し、SKEW指数は確率分布の歪みを表すので、多少は関連性があります。理論上は「リスクオフ(株価急落)→VIX上昇+歪みもクソも無くなってSKEW低下」という構図が成り立ちそうですが、確かに見てみるとリーマンショック前後にはそういった動きが見られます。

 

S&P500との関係

左軸:S&P500、右軸:SKEW指数

1990~1998年くらいまではよく分かりませんが、それ以降の二度の暴落局面では先にSKEW指数の方が天井を迎えているようです。最初の10年は市場構造が異なるのか、ただこの2度の暴落でたまたまSKEW指数が先行したのか、判断は困難ですが…とは言え、「過去最高水準だから暴落が近い」という発想はやや短絡的かと(2017年にそれに従ってSPXをショートしていたら爆死している)。

逆に「相場が緩やかに上昇する過程で、それが長引く程暴落に備えたヘッジのPut買いが増える」と考えれば、単純に前回の暴落から時間が経てば経つ程SKEW指数は上昇しそう、という雑な推定もあながち間違いではなさそうです。

 

余談 VIXの動向

ついでに軽く調べたものをまとめます。自明なデータも多いですが。

S&P500との関係

左軸:S&P500、右軸:VIX

1998~2004年くらいまでは恒常的に20%付近だったのは、今からすると驚きの高水準。

次にS&P500の日次変化率と、VIXの日次変化率をプロットしてみると、

綺麗な逆相関です。昔色々なアセットで調べましたが、S&P500とVIXが一番美しい逆相関だった記憶があります。

 

VIXの確率分布

下は1990年から直近までのVIX自体の確率分布。直近が13%程なので、まさに最頻値ですね。

ちなみに平均値が約19.3、中央値は約17.4です。

 

HVとの関係

ヒストリカルボラティリティ(HV)は過去30日分を使用しています。1998~2004年程まではHVもしっかり高いですね。

次に、VIX-HVで計算したスプレッドとS&P500の比較です。

左軸:VIX-HV、右軸:S&P500

本来ATM IVとHVを引き算すべきなんですが、ここではVIXをそのまま使っています。なのでスプレッドが0以上か、未満かという議論は不可能なので要注意。

 

おわりに

結局「SKEW指数が最高水準だから米株売り、という戦略は危険そう」程度の結論しか出ませんでした。むしろ逆にSKEW指数が低下し始めたら要注意かもしれません(株価の上昇鈍化とセットで発生することが条件?)。

むしろSKEW指数とは関係無く、SPXとVIXの逆相関を利用して、SPX先物とVIX先物をロング+ロングしたり、ショート+ショートして両者の乖離から収益を出したい、と考え始めて約2~3年経つのを思い出し、いい加減何か作れよ、と自分を叱咤したところで今回はおしまいです。

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