デリバティブ偏愛家の日記

デルタヘッジによるガンマロングとカレンダースプレッドの違いについて

題名の時点で「自明でしょ」という指摘をいただきそうですが…今回比較したいのはVega以外です。最近、USDJPYと米30年債先のIVが似た水準で推移しているので、両者のIVロングショートが面白いのでは、と思い色々分析していたのですが、最終的にどの戦略でIVのロングショートのポジションを取るべきか悩んだ時に派生して調べた内容です。

「ガンマロング」と言えば別に「カレンダースプレッドのロングもガンマはロングしてるのでは?」となるので今回の記事では呼称を以下に統一します。

  • ガンマロング:オプションを買って、そのデルタを先物でフルヘッジする
  • カレンダースプレッド:期近オプションを買って、期先の同権利行使価格のオプションを売る(これで「カレンダースプレッドのロング」)

簡単に特徴を整理すると以下のようになります(プラス→ロング状態 マイナス→ショート状態)。

Delta Gamma Vega Theta
ガンマロング 0 + +
カレンダースプレッド 0 +

カレンダースプレッドが面白いのは、Gammaが正なのにVegaが負になる点ですね。二限月分使うので、期近・期先間のIV差分(というかカーブ)がどうなるかも分析が必要になりますが、今回は限月間のIV変化は無しとして、原資産価格の変動の影響を見ます。

 

前提の確認

分析の前提ですが、

  • 銘柄:日経平均オプション
  • 権利行使価格:全てATM Callを使用
  • 戦略毎の枚数設定:期先満期時点で、先物が現状と同値だった場合の想定損失を一致させる

3点目がややこしいですが、今回は2つの戦略で必要証拠金を合わせるのではなく、期近満期時点の想定最大損失を一致させるように枚数を組みます。なので、戦略毎に必要な先物、オプションの枚数は下表のように(マイナスは売り)。

期近ATM Call 期先ATM Call 先物
ガンマロング 2 -1
カレンダースプレッド 3 -3

 

必要証拠金比較

2018/10/17時点でSBI証券のシミュレーターを使って計算したSPAN証拠金は以下の通りで、それ程両者に違いはありません。

  • ガンマロング:389,400円
  • カレンダースプレッド:306,000円

 

プレミアム比較

ネットの受払が異なるので注意。

  • ガンマロング:870,000円の払い
  • カレンダースプレッド:795,000円の受け

 

原資産価格変化 vs PL変化

これ以降特に記載が無い限り、A=ガンマロング、B=カレンダースプレッドとし、時間経過は以下のように設定します。

  • t0:現時点(10/17)
  • t1:10日後(10/27)
  • t2:20日後(11/6)

上図は、原資産価格の変化に対し、PLがどのように変化するか、戦略×時間別にプロットしたものです。まあ概ね同じようにThetaでやられていくイメージですね。

 

原資産価格変化 vs Delta変化

カレンダースプレッドの方は、原資産が大きく動いた場合にDeltaが逆に0に接近する(完全に先物化しない)、という性質がありますが、まあこの差が影響してくるケースは稀だろうな、とは思います。

 

原資産価格変化 vs Gamma変化

組んだ当初からガンマロングの方がガンマが高い状態にありますが、最終的にはATM近傍では一致します。ただ、カレンダースプレッドは満期付近ではあまりに大きく動くとガンマショートになるケースも。

 

原資産価格変化 vs Vega変化

これが両者の最大の違いなのは分かっていましたが…まあ一応。ポイントはガンマロングはVegaが満期に向けて0に近づくのに対し、カレンダースプレッドは最初からガンマショートした場合と同じ程度にベガが負で、更にひたすらマイナス方向に巨大化することです。

ちなみに上記にあったガンマショート(ATM Call売り+先物ロング)の証拠金が60万程度だったので、Vegaをショートするならカレンダースプレッドの方が証拠金対比でも優秀です。

 

原資産価格変化 vs Theta変化

自明ですが、ほぼGammaの逆ですね。

 

取引コストの比較

色々な差異がありますが、そこそこ重要なのがコストの差。

期近ATM Call 期先ATM Call 先物
ガンマロング 1,720 400 2,120
カレンダースプレッド 4,380 4,020 8,400

※いずれも片道、手数料はSBI証券のものを使用

ガンマロングは満期までにある程度こまめに先物の枚数を調整する必要があり(この場合ラージ1枚になっていますが、ミニ10枚であればもう少しメンテがし易いかと)、この片道単純比較では何とも言えませんが、オプションだけで計6枚取引が必要となるカレンダースプレッドは、先物対比でBid/Askスプレッドも広いことを加味すると、ガンマロングに対してコスト面では大きく劣後する印象です。また、ガンマロングは最終的にオプションを放置して権利行使ないし放棄すれば良いですが、カレンダースプレッドは期近満期時に期先側を反対売買する必要があるので、その点でもこの片道比較以上の期待コストになるかと思います。

 

おわりに

IVのロングショート時に、片側だけカレンダースプレッドロングにして、もう一方は普通にガンマロングにすることで、Vegaで見ればロングショート(ネット0)だけど、Gammaではネットでしっかりロングして急変に備える、みたいな戦略を色々考えていましたが、カレンダースプレッドの取引コストがVega基準にしても相対的にかなり高いのが難点でしたね。普通にガンマロング+ガンマショートにした方がヘッジの先物で多少微調整出来て優秀な印象。あくまで今回はそこに主眼を置いた比較だったので、カレンダースプレッドには素直に期近・期先のボラ差分を狙うとか、もっと適した場面があるように思いました。

Tagged on: ,

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です