デリバティブ偏愛家の日記

本当に時間がt倍なら、原資産価格変動の確率分布の標準偏差は√t倍なのか?

いきなりタイトルがクソ長い上に意味が分かり難く、読む人が少なそうな記事ですね。ただ、内容は軽いです。

BSモデルで使われるウィーナー過程ですが、「時間がt倍になると、その原資産価格の変動する確率分布の標準偏差は√t倍になる」という法則が成り立ちます。

現実の市場では、そもそも期間内でボラが一定ということはあり得ないので、これを盲目的に信じることは出来ませんが、ある程度有用なのかどうか、検証していこうと思います。

というのも最近、日足ベースで計算したHVを使って、イントラデイのボリンジャーバンドに使う、というアイデアを検証していて、「まあ平均的にはこうなるだろう」と√t倍前提でやっていたのですが、バックテストをすると、先物の夜間取引時間が延長されるに連れて、段々バンドへの接触確率が低下する現象が起きていました。

バンド自体は標準偏差で計算しているので、本来ボラの影響を受けませんが、日次ベースのHVとイントラデイのHVが上手く比例していない可能性が出てきたので、検証してみることに。

今回は、こういったイントラデイでのボラ変動が全体に与える影響等を、簡単にモンテカルロ・シミュレーションしてみます。こいついっつも簡単なモンテカルロやってるなって?確かに…特に今回は数式で全部完結出来そうですが、文系なのでこっちの方がわかり易い印象ではありました。

前提

今回もドリフト無しのウィーナー課程に従って価格を変動させていきます。

  • 初期価格:100
  • 変動時間単位:1分
  • 期間:2,000分

100円スタートで2,000回変動させる訳ですが、今回は100分足という長い足も計測します。100分足とか誰も見てないと思いますが、単純に計算が楽なだけです。ボラはパターンに応じて変化させます。

HVの計算方法ですが、1分足は全ての価格変動を使う全区間HVと、直近200本分を使って随時計算していく200分平均HV(最終的には計算した1,800個のHVの平均値を採用)の二つを採用します。前者は現実での使用を想定した計算方法ではなく、100分足との比較がメイン。逆に後者は直近データを使用して随時更新していくので実際の使用場面を想定しています。また、100分足は全ての価格変動から計算した全区間のHVを使います。

1分足ベースのHVに対し、100分足ベースのHVは観測期間が100倍になるので、上述の理論に従えば√100倍=10倍になるはずです(全区間HV、200分平均HV問わず)。乱数で価格を動かすので、一回の検証ではブレが大きく、今回は2,000回繰り返すことで平均値を求めます。

で、これだけだと単純なので、ここから手を加え、以下の3パターンを検証します。

1.オーソドックスなボラ固定

固定ボラとして、0.1%(以下、全て分率)を投入

2.期間前半と後半でボラが変化する(一段階)

前半500分は0.1%(1と同じ)、後半1,500分は0.2%。前半と後半の長さが違うのは…ただのミスです笑

3.100分周期で価格変動が20倍になるジャンプが発生

通常のボラは固定0.1%。ジャンプ発生周期は観測間隔と一致しているので、ほぼ寄り付きと同じようなイメージです(倍率は凄まじいですが)。

4.100分周期で価格変動が50倍になるジャンプが発生

原理は一緒ですが、倍率が更に大きくなっています。

結果

さて、各パターンで2,000回計算した後、100分足HV÷1分足HVで計算した比率が下図です。

まあまあ予想通り、という感じでしょうか。1、2はいずれもHVの計算方法を問わず2,000回も回した割には微妙に10を下回りましたが、一応近傍にはいます。2はボラが上昇してもそのまま固定値なので、結局全体が固定なのと同じ状態になるはずで、結果もそのようになっています。何故微妙に10未満なのかはよく分かりませんでした…(バグの可能性…?)

3、4に関しては、200分平均HVが低めに出た影響で10を超える水準となり、ジャンプが大きい方が比率も大きくなっています。また、全区間HVも若干低かったようです。

ジャンプありの場合に200分平均HVが低めに出るのは、ジャンプが占める比率が最大で2/200と少なく、逆に100分足側は全てジャンプを含んだデータになるからと思われます。

おわりに

HVは計算パターンがあまりに多いので奥深い世界です。本数だけでなく、同じデータ期間でも計算する足を変えるだけでも変化がある上に(今回の例)、終値だけ使うのではなく、高値・安値を使ったり、指数平滑化したり…IVの方がよっぽど使い易いケースはありますね…

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4 thoughts on “本当に時間がt倍なら、原資産価格変動の確率分布の標準偏差は√t倍なのか?

  1. DIYクオンツ見習い(?)

    現在、HVのモデリングで試行錯誤中の身にはとても参考になります。

    1つ、勉強のために質問させて頂いて宜しいでしょうか?
    日中データを使うのに、日足のHVを使おうと思ったのは何故でしょう?

    日中足と日足ではσの動きが異なるため(ジャンプ、マイクロストラクチャーノイズ、日中周期性)、日足のデータを持ってくることには違和感を覚えます。

    1. plnjpy Post author

      DIYクオンツ見習い様

      コメントありがとうございます。非常に地味かつ拙い記事だったので、読んでいただけて光栄です。

      ネタバレですが今回ボリンジャーバンドを使用しているのはイントラデイのNT倍率でして、その検証をしていました。おっしゃる通り日足とイントラデイでは別世界なのですが、ボリンジャーバンドの弱点であるボラの周期性を捉えられない点(毎日のように夜間の低ボラでバンドが縮まり、寄り付きの変動でバンドを飛び出す等)をどうにか克服したく、試行錯誤している中で非常に雑ながらも日足HVをそのまま突っ込むと多少の改善が見られています。恐らく強引に日中に動き得る値幅にマッチ出来ているのかと。勿論、水準からして別物なので、「±2σ以内にn%で収まる」というような統計的な性質も持ち合わせていませんが…
      今は時間帯別のHVからバンドを随時伸縮させる方法も検証してみていますが、こうすると伸縮が頻繁に発生し過ぎて、バンド幅変動の影響が大き過ぎるのでは?とも思っています。そこはもう少し掘り下げたいところです。日足であっても曜日毎の変化も加味したいですね…やることが多い…

      また、肝心のボリンジャーバンドですが、通常の金融資産では+2σの変動をしても、その後の確率分布にはほぼ変化が無く、単体では順張りにも逆張りにも一切使えない代物だと考えています。なので、今回は通常の金融資産ではないNT倍率に使ってみました。個人的な感触としては直接売買でき、流動性が高い商品はある程度ウィーナー過程に近い印象を受けますが、比率等はまた少し違う世界なので、アプローチを変えると面白かなと思って試行錯誤しています。

  2. DIYクオンツ(になりたい)

    NT倍率なので、比較的長くポジションを持つ相対価値戦略に使うためだと推測します。
    参入タイミングを計るのにイントラデイのデータを使う。
    その閾値にBBを使う。
    ところが、BBに入力する標準偏差が観測時間足のものだと過剰にバンドが動くので使い物にならない、なので日足のものを入力したら安定した。
    しかしながら市場の枠組みが変わる中で(夜間取引時間の延長)閾値に達しない事象が増えてきて、期待値が損なわれている。
    そこで今回の検証をしてみた or 記事のネタにしてみた。
    という理解でよろしいでしょうか?
    と言いますのも、BBそれ自体は価格の後追いであり、低ボラの期間に収縮するのはむしろ自然ではないか?と思うからです。
    また、時間帯別のHVをBBに入力するのは短期ならば(例えばH1のHVを使い、シグナル発生から決済まで15分以内にする場合など)、やはりバンドが動くのは許容範囲であると言えます。
    (但し、平均化したHVを使う場合です)

    BBを始め、テクニカル指標はそれ単体では役に立たないのが残念ですよね(私も全く使いません(^^;))

    1. plnjpy Post author

      DIYクオンツ様

      まさにおっしゃる通りです…!元々はNT倍率のチャートをひたすら眺めていたところ、通常の金融資産よりも「中期のゆったりとした変動と、短期のノイズの合成」である程度説明出来そうなのでは?というところからスタートし、ノイズ部分のレンジをBBで表現出来ないか、と思って足掻いていたところです。

      ご指摘の通り、確かにノイズ云々の仮説があるとしても夜間のボラが低いのは事実なので、時間帯別HVでも検証してみていますが、懲りずにチャートを眺めていると、そもそも「中期のゆったりとした変動」となる移動平均の足数が超長期で変化してきたのが要因とも思えてきました…これまた深い沼に嵌る予感しかしないのですが、その方面も掘り下げてみようと思います。

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