業界団体が作るクソみたいなパンフを意識してみました。日証協に告発するのは止めてください。あれでも金先協会よりは(以下自主規制)
個人で債先やってる、という方をまだ一人も見たことが無いのですが、個人にとってはマイナーでも機関投資家的には普通に株先やる感覚で、実は思いの外個人でも取引を開始するのは簡単なので、軽く紹介してみます。今回も別にアフィリエイト収入は無いです(悲しい)。

債券先物とは
原資産は
流石にこのブログをご覧の方で「先物って何?」という方はいらっしゃらないかと思うので、そこは割愛。基本的に国債の先物しかなく、地方債や社債の先物は聞いたことが無いです。一応例外?で金利スワップの先物はありますが…
ちなみに債券先物とは若干変わりますが、短期金利をそのまま予想する金利先物も東京金融取引所やCME(GLOBEX)等に上場しています。
満期の処理
債券は店頭取引がメインで、取引所が存在しないため、株先でお馴染みのSQはありません。そのため、現物と先物の価格乖離を防ぐために、満期に現物の受け渡し(受渡決済)が発生するように設計されているパターンがほとんどです(コモディティの先物と同じ)。原油のように指定の倉庫にバレルが置かれるといった悲劇は無いですが、債券の現物を市場で調達する必要があります。普通にレバ1倍で億単位の国債の調達をすることになるので流石にロールオーバーしましょう(後述しますが、IB証券では直前に成行で強制決済してくれます)。
年限で銘柄が分かれる
必ず満期までの期間に応じて銘柄が用意されており、漠然とした「日本国債先物」というものがある訳ではないです。ニュースで見かける「日本国債先物」はほぼ確実に「10年債先物(長期国債)」ですが、実は完全に無人の廃墟となった中期先物と、限界集落の超長期先物も上場しています。多くの国の債先が短期・中期・長期の3銘柄くらいですが、アメリカだけは例外で後で紹介しますが6種類も…
価格形成ロジック
国債というのは、発行するタイミングの市況に応じてクーポン(利子)が多少変動しつつ、かつ価格も動く代物です。先物は商品設計上クーポンを固定した仮想の債券を想定することで、やや簡素化しています。あまりここを細かく説明しても面白くない上に、仮に現物との価格差があっても一部の機関投資家しかアービトラージ出来ないので割愛します。
主要な債券先物の紹介
昔は色々な国の債先がガンガン取引されていたんでしょうが、この低金利時代、米国債が債券市場の圧倒的主役です。債券現物は欧州債(ドイツ以外にフランス、ベルギー辺り)もありますが、先物はドイツとイギリスくらいまで。我らが日本国債の先物は残念ながらマイナーな部類ですが、ここでは日米に絞って紹介していきます。
雑な紹介
まず、米国債の特徴は
- 細かく多様な年限設定
- 年限を問わず圧倒的な流動性
- オプション市場も充実
夢のような市場ですね。
対してJGBの特徴は
- ほぼ10年債以外に無人化した市場
- その10年債も非常に低いボラ(村人しかいない割には流動性はまあある)
- オプション?何それ美味しいの?
夢だと思いたい市場ですね(白目)
米国債先物
取引所
CME(ECBOT)に上場しています。有名なE-mini S&P500先物やCME日経平均先物はGLOBEXなので微妙に別物。
スペック
名称 | 年限 | シンボル | 先物サイズ | ティックサイズ | 証拠金 | レバレッジ |
2Year Note | 1年9ヵ月~2年 | ZT | 2,000 | 1/32の1/8 | 730 | 290 |
5Year Note | 4年2ヶ月~5年3ヶ月 | ZF | 1,000 | 1/32の1/4 | 975 | 117 |
10Year Note | 6年6ヶ月~10年 | ZN | 1,000 | 1/32の1/2 | 1,555 | 78 |
Ultra 10 | 9年5ヶ月~10年 | TN | 1,000 | 1/32の1/2 | 2,050 | 63 |
T Bond | 15~25年 | ZB | 1,000 | 1/32 | 3,200 | 46 |
Ultra T Bond | 25~30年 | UB | 1,000 | 1/32 | 4,500 | 36 |
とりあえず全員並べました。細かく見ていきます。公式サイトへのリンクはこちら。
- 年限:現物の受け渡しをする場合、債券の残存期間がこの範囲内にないといけません。おおよそ名称とリンクしてますが。
- シンボル:証券コードみたいなもの。IB証券のTWSではこれで検索可。
- 先物サイズ:CMEのHPだと更に100倍の値になっていて分かり難いですが、債券は本来$100が基準の価格なので、債券の額面としてはあっちが正しいかと。ただ、普通に他の先物と比べる場合、先物一枚あたりの時価はこの「単価×先物サイズ」で計算した方が分かり易いので、1/100しました。なので、例えばZNだと一枚で終値$122×1,000=$122,000≒1,340万円程です。
- ティックサイズ:これが曲者。というかクソ仕様。こちらでも紹介してますが、1/32刻みを更に細かくしていく、という謎の呼び値設計により、非常に分かり難いです。例えばZNの場合、以下のように計算します。
計算例
「122’15」→122 + 15 / 32 = 122.46875
「122’025」→122 + 2.5 / 32 = 122.078125
- 証拠金:これを書いている2019/2/15現在の、一枚あたりのドル建てオーバーナイト証拠金です(必要な証拠金の種類で最も大きい額)。
- レバレッジ:先程の先物サイズを使って計算した時価÷証拠金で計算したもの。
年限が豊富なのも特徴ですが、先物一枚あたりの時価・証拠金が結構少額なのもポイントです。
満期・限月交代
3・6・ 9・12月限というありがちな構成。ただ、限月交代の時期は結構早い+長いのが特徴で、例えば2019年3月限の満期は3/20ですが、通常は2月下旬から6月限も出来高が増えていきます。日経平均ではSQ前日辺りにロールするのが恒例なので、要注意。
オプションの満期は先物の満期と必ず別に設定されていて、差金決済ではなくITMで権利行使すると先物に変化します。しかもアメリカンなので稀に満期より前に行使されるケースもあるようです(これは自分も未経験)。また、権利行使作業は銀行時代にはやりましたが、TWSではやったことがないので情報が無いです。すみません。
取引時間・流動性
一応日本時間23:30~翌7:00(冬時間)までが通常取引時間で、通常時間以外を含めると朝8:00~翌7:00まで取引可能です。ちなみに通常時間以外でも流動性に一切問題は無いと考えて良いです。ほぼ常に全銘柄で、bid/askスプレッドは最小単位でクオートされています。
年限別の特徴
- ZT:流石に短い年限なので、チャートはカクカクしています。レバレッジこそ高いですが、その分ボラはかなり低いです。一応経済指標等にはきちんと反応します。オプションは権利行使価格の間隔が広過ぎて使い難い印象(取引は普通に可)。
- ZF:普通に短期売買出来るレベルの値動きで、流動性はかなり高い部類。
- ZN:他国の債先はこの年限が主戦場なので、米国債においてもトップクラスの流動性です。板には各呼び値に5,000枚程乗っているので、ほぼ吹き飛ばすことは無いかと。オプションも充実。
- TN:ZNの年限指定が若干広いことを受けて、数年前に追加された銘柄。現物のヘッジにはこちらの方が適しているようですが、流石に近い年限があるので流動性は結構落ちます。
- ZB:板は相対的に薄いですが、ボラが高いのでリスク量で見ればそこまで少なくはない程度。
- UB:ヘッジニーズが少ない年限なので、ZBより更に流動性は落ちますが、それでも各呼び値に200枚程はあります。
日本国債先物
取引所
- 大阪取引所(OSE):我らがJGBの本拠地。
- シンガポール証券取引所(SGX):事実上JGB miniのみ。日本の祝日でも取引可能。
スペック
名称 | 年限 | シンボル | 先物サイズ | ティックサイズ | 証拠金 | レバレッジ |
中期国債 | 4年~5年3ヵ月 | – | 1,000,000 | 0.01 | – | – |
長期国債 | 7年~11年 | JGB | 1,000,000 | 0.01 | 1,910,000 | 80 |
ミニ長期国債 | 7年~11年 ※差金決済 | – | 100,000 | 0.01 | – | – |
SGXラージJGB | 7年~11年 ※差金決済 | – | 1,000,000 | 0.01 | – | – |
SGXミニJGB | 7年~11年 ※差金決済 | SGB | 100,000 | 0.01 | 191,000 | 80 |
超長期国債 | 19年3ヵ月~21年 | – | 1,000,000 | 0.01 | – | – |
(※廃墟の中期国債、SGXラージと、ほぼ無人島の超長期国債は一部データ割愛)
実質、機能しているのは2銘柄のみです。
満期・限月交代
これまた3・6・9・12月。日経のSQとは別で、もう少し遅め。ロールオーバーは満期数日前に集中して行う、日経平均先物と似た状況。機能している銘柄の中で、OSEラージは受渡決済なので要注意。ミニは、ラージの1日前に満期を迎えることで差金決済型になっており、SGXはいずれも差金決済。勿論ロールオーバーも1日早いのはお忘れなく。
取引時間・流動性
OSE系(公式サイトリンク)
区分 | 開始 | 終了 |
前場 | 8:45 | 11:02 |
後場 | 12:30 | 15:02 |
夜間 | 15:30 | 翌5:30 |
昼休みが無駄に長いJGB。お陰様でランチにより早く行けます(結構昔助かってた)。反面、夜間のスタートが早いので、おやつタイムは短め。
OSEラージ長国に関しては、普通に個人が取引する際に流動性が問題になるケースはほぼ無いと考えて良いです(cisさんレベルの資金力を除く)。夜間も普通に人はいて、bid/askはほぼ常に最小単位の1銭です。
オプションは一応存在していますが、OTM Call/Putで権利行使価格上下一本分程度しかまともに取引されていないので、大して使い物になりません。
SGX(公式サイトリンク)
区分 | 開始 | 終了 |
通常 | 8:25 | 18:15 |
夜間 | 18:30 | 翌5:45 |
全て日本時間表記。何故か主要市場より早く開く謎仕様。かつ昼休み無し。東京とひたすら休場時間をずらしているので、こっちも使って欲しい、という意図なのでしょうか。
SGXミニは結構流動性が厳しく、MMこそいるものの、bid/askはたまに最小の1銭になったとしても、その時はほぼbid/askのいずれかは数枚程度(MMは基本2銭スプレッドで出している模様)。大口取引はかなり難しいので、小分けして撃っていく必要があります。
取引可能な業者
実はCFD(債券先物CFD、債券ETF CFD)でも取引可能なので、そちらも含めて紹介しておきます。
インタラクティブ・ブローカーズ証券(IB証券)
王道、というか先物をストレートにやろうとすると、ほぼここ一択です。
種類 | 取引可否 |
米債全般 | 海外口座で可(オプション含む) |
OSE JGBラージ | 国内口座で可(オプション含む) |
SGX JGBミニ | 海外口座で可(※SGXなので) |
厄介なのは口座が国内・海外に分かれてしまうことです。同時に開けるようですが、完全に別建てで、口座間の資金移動には銀行送金が必要になります(なのでロング・ショート主体の私は、PLが相殺出来るSGXのJGBを使っています。スプレッドはOSEの方が狭いのですが…)。
マーケットデータ
IB証券をご存知の方ならお分かりかと思いますが、リアルタイムデータを受信するにはマーケットデータ購読料の支払が必要です。
種類 | 取引所区分 | 月額(個人) | 月額(法人) |
米債全般 | ECBOT | 0 | USD112.5 |
OSE JGBラージ | OSE | JPY400 | JPY2,200 |
SGX JGBミニ | SGX | SGD2 | SGD2 |
軽く解説。
- ECBOT:今回紹介していない金利先物や、ダウ先(YM)、コーン、大豆等の若干のコモディティーも含まれます。ただ、前述のように一番有名なE-mini S&P500(ES)やCME日経平均、各種為替先物はGLOBEXなので別枠です。原油や金はNYMEXなのでこれも別。
せこいわ。 - OSE:日経平均先物やTOPIX先物も含んでいます。
- SGX:SGXに上場する全ての先物を含んでいます。SGX日経平均以外はかなりマイナーなので、期待しないように。ただ、ひたすら安いので許せる。
やや脱線ですが、ECBOT、SGXにそれぞれ日経平均の先物があるので、海外口座でもこの辺りを使えば普通に日経を取引出来ます。
受渡決済に関する注意
IB証券では現物の受け渡しが不可能なので(まあ、されても困る)、満期より前に強制決済されます。
これがタイミング含めて結構複雑なので、是非HPを参照して下さい(リンク)。対象の銘柄のポジションを持つと即アラートが出る上に、「First Notice Dayが来ました」というリマインドもメールやアラートで来ます。基本的に今回紹介したどの受渡決済銘柄も板は厚いので、勝手に成行で決済されますがそれ程悲惨なことにはならない…はずです。とは言え、流石に事前に自分でロールオーバーするなり閉じるなりしておきましょう。
総括
先物で市場に直接アクセス出来るので、スプレッド含めた取引コストはダントツで最小です。また、オプションが取引出来るのは実質ここのみ。
法人だとECBOTのマーケットデータ購読料が妙に高いのがネックで、稀にしか取引しない場合はオススメしません。
IG証券
先物ではなくCFDになりますが、一応JGBも可能な業者。
公式HPの説明はこちら→リンク
種類 | 取引可否 |
米債全般 | CFD(通常・ミニ) |
OSE JGBラージ | CFD(通常・ミニ) |
SGX JGBミニ | (上に含まれる) |
全種類に1ロットが1/5のミニが存在するので、小口取引が可能です(ただ、JGBに関してはラージの1/5なので、ミニの2倍)。
満期
CFDですが先物連動らしく、やや面倒ですが満期があります(差金決済なのでそこは楽ですが)。
マーケットデータ購読料
価格生成はIGが行っているのでマーケットデータ購読料は不要。
取引コスト
ここが最大のネックです。
名称 | シンボル | CFDスプレッド | 先物スプレッド | CFDレバ | 先物レバ |
2Year Note | ZT | 20 | 7 | 50 | 290 |
5Year Note | ZF | 20 | 11 | 50 | 117 |
10Year Note | ZN | 40 | 19 | 50 | 78 |
T Bond | ZB | 40 | 35 | 50 | 46 |
Ultra T Bond | UB | 40 | 35 | 50 | 36 |
JGB | JGB | 50,000 | 11,700 | 50 | 152 |
- CFDスプレッド:通常サイズが先物と同じサイズなので(JGBの場合はラージ)、通常サイズの1単位のポジションを持った場合のbid/askスプレッドです。単位は米債がUSD、JGBはJPYです。
- 先物スプレッド:CME、OSEの先物のbid/askスプレッドに往復分の取引コストを足したもの。
- CFDレバ:そのまんまですね。
- 先物レバ:同上。
ご覧いただくと分かりますが、なかなか短期売買する気の起きない取引コストです。正直何故ボラが全く違う銘柄なのに、レバレッジ一律50倍なのが謎ですが…
ZB、UB辺りはレバ、取引コスト共に先物と大差無いので使えるかもしれませんが、逆に悲惨なのがJGBで、一日に平気で10銭未満の値動きとなり得る銘柄で5銭相当のスプレッドなので、正直かなり辛いです。体感としてはUSDJPYで30銭くらいでしょうか。外貨預金かよ。
総括
コストは悲惨ですが、前述のように法人だとマーケットデータ購読料がかからない分、少額でたまにやる分には検討の余地ありかもしれません。個人でも、IB証券の海外口座は海外送金扱いで色々とコストが嵩むので、気軽に始めるならこちらが楽かと。また、ドイツ、イギリス、フランス債も簡単に始められるのもポイント(コストは比較したこと無いですが…)。
SAXOBANK
米債のETFを原資産としたCFDと一応30Y債先物が取引可能です(ちなみにETF CFDに関しては、IG証券にも同様のものがあったはず)。
銘柄リスト→リンク
※何故か名称が「債権CFD」になっていますが…
欧州企業だからなのか、何故か欧州債は普通に先物系CFDが取引可能です。妙にレバが低い気がしますね…
銘柄リスト→リンク
番外編 光世証券
元大証理事長が作った、という経緯もあり、国内証券で唯一?個人でもJPXの全てのデリバティブが取引可能です(有価証券オプションすら可能という驚きの守備範囲)。情報はほぼ無いですが…
おわりに
軽く紹介するつもりが、結構長引きました。ちゃんと記事にしようとすると真面目に調べるので、最近忘れがちだったことも思い出せて良いです。
取引編にも期待してます!
tanaka様
コメントありがとうございます。これだけだとなかなか始めるにはハードルがあるので、続編も書いてみたいと思います。